●イスラムに興味を持った訳
オイルショックの時代に建築事務所を始め、がむしゃらに働いたのち5年目にヨーロッパ旅行に
旅立った。その最終地がトルコのイスタンブールであった。この地において、イスラムの文化と
建築空間に触れ、何故か大変なショックを受けた。
●イスラム文化とは
唯一無二の神、アラーの神を信仰する文化である。神像を崇拝することなく、最後の神の言葉
としてムハンマドの伝える経典コーランの教えにしたがい、生きる人々の文化である。
ムハンマドの後継者には聖徒カリフと聖徒アリーの一族があるが、後者の一族から出て行った
人々が現在のイスラム原理主義となる。シーア派のイランのホメイニ等がこの教えを守る人々
であり、前者が6信5柱に教えにしたがう
【6信】1.神 【5柱】1.信仰告白
2.天使 2.礼拝
3.使徒 3.喜捨
4.コーラン 4.断喰(ラマダンの日)
5.来世 5.メッカ(聖地)への巡礼
6.予定(その人の人生の定め)
のに対し、5柱に第6のジハード(聖戦)を付け加える人々でもある。
なぜイスラム原理主義が離れたかはキリスト教文化を持つヨーロッパの人々の今日の世界支配
に対し、かつての全盛を誇ったイスラム世界の復興を唱え、その戦いの中から、もっとも世俗
化(西欧化)しないコーランの教えを守る人々の純粋なイデオロギーと言える。又、神の言葉
としてコーランを解釈し、生活上のあやゆる問題を解決するための。宗教上の最高指導者より
発せられる命令は絶対的であるとした近代法と同居するイスラム法を理解するところから、イ
スラム文化の理解が始まる―――。 ●ムハンマドから始まる礼拝堂モスク
モスクとはメッカ(聖地)に向かい毎日礼拝するためのお堂である。
神像を崇拝することなき宗教であることからして、メッカの方向にギブラと呼ばれる壁を築き、
その中心にミヒラーブと呼ばれる窪みを設け、メッカの方向性を示し、その方向に礼拝者が平
行して祈りをささげるお堂である。その上部に乗っかているのがドームであり、中庭には洗水
と、ミヒラーブの脇にはシンバルと呼ばれる階段状の説教台がある。
又、礼拝時刻を告げるためのミナレットち呼ばれる塔もそびえる。
ドームとミナレットの形状が原始型モスクから地域性を持ったトルコ型、イラン型等変化をと
げる。お堂の素材は日乾し煉瓦積みから、その上に陶タイルの装飾をほどこしたもの迄あるが、
この陶タイルの青色とアラベスク模様(その宗教上の特性から中心軸などを持たない極めて緻
密な幾何学模様)が特徴的である。などなど。
以上スライド写真を見ながら解説が続く―――。 ●エピローグ(後日談)
喜田先生がイスラム文化にのめり込む理由を尋ねたところ、今日の西欧文化に対し、11億人
もの教徒を持つイスラム文明との調和が必要と感じる。その為に、日本においてもイスラム文
化の民間での研究、理解がもっと進まなければならない。微弱ながらその礎となればとの旨。
又、建築コーディネーターとして、モスクの持つ立方体とドームの構造の科学的に見た合理性
等、スケッチを描きながら、その秘密をご教授いただいた。
建築事務所長、専門学校副校長等、多忙な毎日の中で、イスラム文化に触れ、その歴史や
モスクの美しさを語ってくださった喜田先生に感謝。今後共、イスラム文化に対する研究、
研鑚の探耕をはかられることを皆で期待したいと思います。
H 12.6.15
(北尾・取材)